先の第3戦関東大会で開幕からの連勝記録こそ一時途絶えたものの、新井宏彰にはなんの焦りも生じてはいなかった。むしろ、シーズンの仕切り直しをする場所が、彼の第2のホームでもあるグリーンパーク弘楽園になったのは幸いだった。それこそいつも通りの走りをするだけでいい。予選、公式練習と、イメージ通りの走りが出来ていた。新井はリラックスして決勝の朝を迎えていた。
迎えたヒート1。横一戦のスタートから1コーナーに近づくにつれて、かすかに見えていた両サイドの視界がクリアになっていく。当然、新井の行く手を邪魔するものは皆無だ。毎回群を抜く加速の伸びを見せるKX250F-SR。1コーナーをターンした時、一瞬ブルーのフェンダーが見えたが、下りのジャンプセクションを通過したとき、すでにその気配は背後に回っていた。そこから先は自分の走りのイメージをトレースするだけだった。周遅れが現れるまで新井の行く手を邪魔するものはいない。誰が上がってくるか考える必要もない。もちろん後続では、ライバルたちがなんとか新井との差を詰めようと必死になっていた。しかし、淡々と周回を重ね、正確にラップを刻み続けながらも、レース中のベストラップをマークしたのは新井だ。スタートtoフィニッシュの独走。完璧とも言えるレース運びで、連勝への再スタートが切られた。
続く第2ヒート。いつものスタートダッシュで1コーナーのインをターンした新井に対し、数台のマシンがアウトから新井の前に出ようとしていた。リスクの大きいスタート直後の攻防で無理をする必要はない。1周目はヤマハの小島太久摩、カワサキのルーキー三原拓也、スズキの星野
裕が先行する形となる。2周目、新井はまだトップのスピードを保てない三原をパスする。その隙になんとか逃げきりを図ろうとする星野と小島を確実にフォローした新井は、4周目に星野をパスし2番手に浮上すると、6周目には小島をパスしトップに浮上。2番手に落ちた小島も必死で新井に食い下がるが、中盤以降二人に絞られたトップ争いで、先に音を上げたのは小島だった。フィニッシュタイムが近づくにつれ、小島が遅れだす。それでも新井は攻め続けた。トップ争いよりも自分自身に負けたくなかったからだ。1-1という成績は開幕1、2戦のリザルトと同じだが、このレース新井は、自分との戦いにも勝利していた。
再び連勝街道を走り始めた新井は、5月26、27日、スポーツランドSUGOで行われる世界選手権日本グランプリMX2クラスに初参戦する。「世界のトップライダーとレースして、今の自分のポジションを確かめたい。」全日本のリーダーとして世界に挑む新井。頂点を目指す新たなチャレンジが始まろうとしている。
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