新井宏彰&KX250F-SRが、圧倒的な強さで開幕戦パーフェクト優勝を飾る!!
文句なしの、正に圧勝だった。
予選、決勝の2ヒートを通じて、レース中他のライダーの背中を見たのは、第2ヒートのスタートでほんの一瞬先行した須田
純以外、途中から次々に現れたバックマーカーのみ。全日本モトクロス選手権開幕戦SUGO大会IA2クラス、TEAM
GREENのライダー新井宏彰の行く手を阻むものは、皆無だった。
誰もが気持ちを高ぶらせ、重苦しい緊張感に苛まれる開幕戦。スタートラインに着いた新井の中に、一抹の不安がなかったわけではない。予選の結果や公式練習のタイムを見れば、新井が誰よりも優位にポジションにいることは明白だった。しかし、レースは蓋を開けてみなければ分からない。
「スタートさえ決めれば。あとは今日までやって来たことを出せばいい。結果は自ずと付いてくる。」
重く垂れ込めた曇り空の下、スタート15秒前のボードがライダーに向かって水平に倒される。横一列に並んだ32台のマシンの排気音がピークに達する。次の瞬間、ふいに訪れた一瞬の静寂。スターティングゲートが動いた。
「行くぞ!!」
新井のマシンKX250F-SRが鋭い反応を見せる。次の瞬間、両サイドの視界からライバルたちが消える。誰も邪魔することのない1コーナーに自分のラインが待ち受けていた。折しも降り始めた雨の中、まるで春雷の閃光のように新井とKX250F-SRは1コーナーを切り裂くように駆け抜けた。31名のライバルたちを置き去りにして。
後ろから誰かが追いかけてくる気配はまるでない。新井はそのことに驚いていた。どんなバトルになるかをずっとイメージしていたのに、いくら待ってもその相手が現れない。「なぜ?」その気持ちが集中力を絶やさぬように、新井は更にコースを攻め続けた。その走りの前に、ライバルは近づくどころかどんどん後方に遠ざかる。レースは新井の完全な独走となった。
遥か後方で表彰台の一角を争うもう一台のKXが、井上眞一から須田に代わった以外、第2ヒートも同じよう展開だった。ラストラップ、「ピンピンやん」とメカから差し出されたサインボード。独走に終始したレースを、新井は両腕で拳を作り、胸元に引き寄せて締めくくった。後続を寄せつけぬ速さ、ライバルを圧倒…。レースで時折使われるその表現は、この日、新井のために用意された修飾語となった。
表彰台のてっぺんで、スポンサーやファンに感謝の気持ちを伝えた後、新井は改めて素直な気持ちを語る。「最高の環境を用意してもらえた。今日が誕生日の田澤監督のためにも勝てて嬉しい。一戦一戦全力で戦って、必ずシリーズチャンピオンになる。」
満面の笑顔の奥にある新井の視線は、すでに次の目標へと向かっていた。