■オープニングラップから最終ラップまで
手に汗握るトップ争いは見応え十分だった
あとわずか。ほんのわずか、柳川選手は優勝に手が届かなかった。最終ラップにこの日の最速タイムをたたき出し、逃げる中須賀選手を最後の最後まで追い詰めたものの、コントロールラインをトップで通過することはできなかった。「ほんと、悔しいですよ。いやぁ、悔しい」インタビューを終えた柳川選手は、健闘をたたえる周囲の声に笑顔で手を振りながらも、あとわずかで逃した優勝に対する悔しさを何度も何度も口にした。
前日の土曜日。JSB1000クラスではスーパーポール方式という予選方式が採用された。1回目の予選タイム上位12名による単独タイムアタックで、順位を決めるというもの。柳川選手は1回目の予選で1分51秒623をマークして確実に6番手を手にした。コマを進めたスーパーポールでは、午前のタイムを1秒3も縮める1分50秒302のコースレコードをマーク。最後のアタッカー秋吉選手にポールポジションを譲ったものの決勝レースでの快進撃を予感させるに十分な走りだった。
決勝当日。フロントローには、秋吉選手、柳川選手、酒井選手の3名が並ぶ。お得意のロケットスタートで、ホールショットを奪ったのは柳川選手。サーキットに詰めかけたカワサキファンの応援も一段と大きくなる。しかし、秋吉選手、酒井選手も負けていない。等間隔に並んだ3台はまるで影のようにぴたりとくっついて、レースを引っ張る。レースラップは1分52秒台前半。マシン性能の違いか、レコードラインもブレーキングのタイミングも少しずつ違う3台は、コーナーごとにその差を伸縮させながらラップを重ねていく。3周目の1コーナーで酒井選手が一端前に出るものの、すぐさま第1ヘアピンで柳川選手があっさり逆転。10ラップあたりまで上位3台の先陣争いは熾烈を極めた。
動きがあったのはレースを折り返した10周目。3位走行中の秋吉選手がセカンドポジションの酒井選手と接触し、秋吉選手は転倒。バランスを崩した酒井選手がタイムロスし、その間に4番手につけていた中須賀選手が柳川選手の背後に迫ってきた。上位陣の鍔迫り合いをじっと背後で見ていた中須賀選手は、ここからぐっとペースアップすると12周目にはついに柳川選手をかわしトップに立った。しかも、周回遅れをパスするタイミングが美味くいかず、その差はじわじわ開く一方。柳川選手から優勝の芽が消えたと誰もが思ったのである。
ところが、スーパーポール方式の予選で1秒ものタイム短縮に成功した柳川選手は、最終ラップに底力を見せつける。トップ争いで消耗してしまったリアタイヤをスライドさせながら、1分52秒台後半だったラップをなんと1秒も短縮。逃げる中須賀選手との差を縮め、たちまちテールトゥーノーズの接近戦に持ち込んだのである。逃げる中須賀、攻める柳川。2人の攻防は息をもつかせぬ大バトルとなり、詰めかけたファンを喜ばせた。
「2位じゃダメなんですよね」柳川選手は手に汗握るバトルを展開し、ファンを魅了した柳川選手はなおも逃した優勝を口惜しがった。「なにかが足りないんですね。それ見つけて後半戦はきっちり答えを出します」。こう結ぶとようやく、いつもの笑顔でファンの元に向かっていった。
<<野村監督のコメント>>
いけると思ったんですけどね。周回遅れにちょっと手間取っているうちに、中須賀選手にアドバンテージを許してしまいました。勝負のあやなんでしょうか。でも、期待に違わぬ走りを見せてくれたと思います。スーパーポールのレコードタイムをたたき出した走りといい、序盤から最終ラップまで魅せてくれたトップ争いなど、さすが柳川ですね。それだけに悔しさもありますが、かなり評価できる2位だと思います。後半戦はもっと面白くなりますよ。ぜひご期待ください。
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