新井宏彰&KX250F-SRが、開幕戦に続き2戦連続パーフェクト優勝を飾る!!
新井宏彰はまだ急いでいた。両ヒートとも、ほぼ完璧なレース展開による圧勝だった。完璧という言葉に「ほぼ」と付けたのは、実は第2ヒートの1周目に転倒していたからだ。スタートはホールショットこそ決めることが出来なかったが、すぐにトップに立ちスパートをかけた。勝負を急いだわけではないが、荒れたコースでベストラインを走るには早めに前に出た方がいい。それはレースの鉄則だった。トップに立った直後、ディープサンドのコーナーでイン側のラインを選んだ。比較的掘り返されていないように見えたからだ。単に進入のスピードが速すぎたからかもしれない。しかしいざ入ってみるとそのラインは思った以上に深くえぐられていて、急に制動がかかったようになり、バランスを崩してマシンを倒した。
第2戦の会場、名阪スポーツランドは新井にとって、決して相性のいいコースではなかった。むしろ唯一苦手意識のあるコースだった。逆にライバル平田
優は、このコースを最も得意としていた。「去年までの自分だったら、あのミスで完全にリズムを崩して自滅していたでしょうね。でも、不思議と冷静でいれたんです。」エンジンを止めずに済んだことも幸いした。新井はすぐに再スタートすると、3番手で1周目をクリア。先行する2台をパスするのに2周を費やした。4周目トップに立った新井のスパートで、なんとか追いすがろうとするライバルたちの気配が遠ざかる。そこから先、新井の行く手を邪魔するものは、途中から次々と現れるバックマーカー以外皆無だった。
レースの序盤、新井の前を数周だけ先行したライダーのゼッケンが一つ違っただけで、そこから先の展開は、第1ヒートと全く変わらなかった。荒れた展開となることが多い名阪のコースを、新井は誰よりも速く、冷静に、確実にトレースした。ライバル平田の追撃を余裕でかわしてチェッカーを受ける。ワンハンドで示した人指し指の先には、新井の勝利を見守る大勢のファンの視線があった。
レース後のパドックで新井がレースを振り返る。「何度もコースに足を運びました。去年までは自分でマシンを整備しなければいけないから、それが出来なかったんです。でも今年は専属のメカニックがいるから、自分はレースに集中することができる。そのアドバンテージを有効に使わせてもらいました。レース中試した以外にもいいラインは何本も見つけてあったし、どんな展開になっても慌てる必要はないと思った。気持に余裕が持てたんです。もっとも、KXはスタートが抜群にいいんで、展開はだいたいいつも決まってるんですけどね(笑)。」
パーフェクト優勝を決めた新井が、メカニックの小島永嗣の元に駆けつけ喜びを分かち合う。カメラマンの要求にがっちり肩を組んでポーズを取った。田澤豊晃監督も祝福にやって来た。その直後、新井は急に慌てたように走り出す。急いで向かった先は次のレースのスタートウエイティングエリアだった。最終レースIA1クラスに出場するカワサキワークスの溝口哲也が、去年まで自分が在籍したグリーンクラブ&パーク神戸RTの吉田
勝がそこにいた。彼らにコースの最新状況を伝えるために新井は急いだのだ。
チームが新井の走りを支える。新井というライダーがカワサキというチームを支える。それが新井の、そしてカワサキの更なる強さへと繋がっていく。
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